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福山大学 様

第1回「学生の学びを止めないための体制整備」オンラインセミナー

学生の学びを止めるな! 遠隔授業実施の為の体制整備インタビュー

福山大学

大塚 豊 先生

 

2020年9月18日(金)に実施した第1回「学生の学びを止めないための体制整備」オンラインセミナーにおいて、このコロナ禍においても学生の学びを止めないために実施した工夫や体制整備についてお話いただきました。
後半には京都大学の飯吉透先生によるインタビューも実施しております。
最下部に動画とPDFデータのダウンロードリンクもございますので
あわせてご覧ください。

 

セミナーの概要についてはこちら

遠隔授業実施の為の体制整備について

福山大学におけるコロナ禍における遠隔授業対策

福山大学は5学部14学科、大学院4研究科に約4000名の学生が学んでおります。また専任の教員は194名、非常勤の教員が165名となっています。
本学では緊急事態宣言を受けまして、学内でICTをつかさどる共同利用センターが、Cerezo(桜を意味する福山大のLMS: manaba )とZelkova(ケヤキを意味する福山大の学内ポータルサイト)の使用法の周知、そして遠隔授業の詳細なマニュアルである「遠隔授業の準備・実施ガイドライン」を作成し、全教員に配布、周知を行いました。マニュアルは1)PowerPointのスライドショーの記録、2)YouTubeでの限定公開、3)zoomによる双方向授業など、詳細なものとなっております。
同時に、希望する教員に向けて遠隔授業研修会を複数回実施したり、電話・窓口での個別のサポート・相談も受けるようにしておりました。

また、学生のICT環境整備を補助するため、全学生に返還不要の奨学支援給付金を一律5万円支給し、また、PC100台、モバイルルータ50台を貸出用として準備いたしました。
さらに、危機対策本部がホームページ上で「健康管理と行動調査」というアンケートを毎日実施いたしました。調査票の記入・送信を全構成員に要請し、延べでほぼ100%の回答が得られています。合わせて、感染防止啓発の動画配信や、高速自動検温システムの導入を行いました。

緊急事態宣言解除後、対面と遠隔の併用へ

緊急事態宣言の解除、および県境を越えた移動が可能になってから、対面授業と遠隔授業の併用に移行しました。2020年度は879の開講科目がありましたが、密集を避けるためクラス規模60名を基準に、実験・実習・実技などの科目特性を精査して、対面632(71.9%)と遠隔247(28.1%)に区分して実施することとしました。
併用授業の実施にあたり、基礎疾患の有無や、担当教員・学生の特殊な事情がある場合は無理強いをしないということで、遠隔に回すといった配慮も行いました。来日できない留学生には教科書の入手支援を含めた遠隔サービスも実施しております。

図書館では、資料の貸出や郵送対応、オンラインでのサービスの拡充を進めました。
対面授業では、机上に2席ずつ空ける印をつけました。さらに、万一感染者が発生した場合の濃厚接触者の把握がしやすいように、全クラス座席指定としました。学内の随所には手指消毒剤の配備、スクールバスの大幅増便や学食における空席の確保など、基本的な感染防止策も実施しました。

併用授業を実施した前期授業を終えて

本学では毎年授業評価アンケートを行っていますが、今回は遠隔授業に絞ってアンケートを実施しました。
アンケートは2つ実施しました。1つは居住場所のネットワーク環境等、受講するうえで状況を把握することが目的でした。使用していた端末としてはスマホ利用が22%おりました。また1/4ぐらいの学生は通信量に関して上限があると回答しています。さらに実際に受講する上での問題についても聞いた結果、原因として挙がったのが、通信量の不足が20%、ネットワーク環境が悪いというのが約半分、約1割はPCが古いという結論が出ています。

さらに、アンケート2として、非常勤講師を含む全教員一人あたり少なくとも1科目を対象に、学生に遠隔授業について評価してもらいました。アンケート内容としては、「授業の形式」「課題の形式」「(自分自身の)学修への取り組み」がそれぞれ適切であったか、教員からのフィードバックは適切におこなわれていたかといった項目を5段階で評価してもらいました。結果、授業の形式としては全学平均4.36、課題の形式は4.39、学修への取り組みは4.17と比較的高い評価を得ました。その反面、教員からのフィードバックについては3.91という結果が出ていました。ここから読み取れるのは、対面、遠隔にかかわらず、教員がいかに学生に寄り添い、コミュニケーションするかが大切であるということでした。また、自由記入欄には「(オンデマンド授業で)時間に関係なく、何度でも視聴可能だった」「一人なので集中しやすかった」などの好意的なコメントが多くありました。
後期がまもなく始まります。1,021科目のうち、対面が673科目(65.9%)、オンラインが346科目(33.9%)の実施を予定しておりますが、これまでの経験を活かして、後期はより良い遠隔授業を進めて参りたいと思っております。

京都大学 飯吉透先生によるインタビュー

飯吉:先生方や学生から、この授業は対面でやってほしいとか、遠隔でやってほしいとかという要望はあったのでしょうか。またそれに対して大学としてはどう対応されたのでしょうか。
大塚:ルールは決めております。クラス規模の問題、また実験・実技・実習等の科目の問題等々を考慮しました。しかし、先生、そして学生でも基礎疾患を持っている人がいますので、(対面授業対象でも)遠隔でやることを許可したり、対面が難しい学生に対してCerezo( manaba )に教材を上げて対応するということでやってきました。

飯吉:その柔軟な対応が素晴らしいと思います。これから併用を始める多くの大学では役に立つのではないでしょうか。
では、前期の学びを踏まえて、後期はどのように取り組んでいかれますか。
大塚:多くの教員にとっても初めての経験だったこともあり、すべての教員がまだまだ manaba やzoomの取り扱いに慣れているとは思いませんので、継続してサポートを行っていきたいと考えています。また、オンライン教材の作り方や、学内で遠隔授業を考えるシンポジウムを全学の教員を対象に実施して、遠隔授業の評価の高い先生に登壇いただき、事例を紹介いただくなど、改善を続けていくことが大切だと考え、進めています。
また、学生と教員とがどうつながるか、フィードバックや学生の質問に対してどう対応していくか、この点は遠隔授業・対面授業に関わらず重要なことだと考えていますので、この点もさらに良くしていきたいと思っております。

飯吉:双方向授業に関して学生の評価はいかがでしたか。
大塚:「囲碁から学ぶ人間学」という授業は日本棋院の先生がzoomを使ってやられたんですが、対面と変わらなかったという講評もありました。が、やはりネットワーク環境の問題で、配信が止まってしまった、という指摘も若干ありました。やはり通信の問題はキーだと思います。また、双方向授業ではありませんが、オンデマンド授業の授業では、学生が積極的に manaba の掲示板に書き込むようになりました。これは対面授業に戻っても、今回覚えたオンラインの手法を積極的に取り入れるべきだと思いました。

飯吉:先生方からのコメントや意見はありましたか。
大塚:オンライン教材づくりの負担が大きいという声は多く上がっていました。あとは著作物の引用に関しても心配される先生もおりました。
また、個人的には遠隔授業は対面授業を補うものかなと思っておりまして、Face to Faceの授業が自分の思いを伝えるにはいいかなと感じています。

飯吉:対面と遠隔の割り振りはルールを決められていたそうですが、担当教員の意見を聞くことはあったのでしょうか。
大塚:これは事前に調査を行い、実験・実習がある授業でも遠隔で実施できるものは遠隔で行いました。どうしても対面でないとできない、また特に理系学部の卒業年次の卒業研究等で遠隔では行えないものは対面で実施しました。
飯吉:先生のお話を伺って、非常にきめ細やかな配慮をされていると感じました。このような緊急時の対応において、教員だけでなく統括するアドミニストレーターの方の熱意も大切だと改めて思った次第です。

お話いただいた方々

大塚 豊 先生

福山大学 副学長(学務担当)
大学教育センター長

広島大学教育学部教育学科卒業、同大学院教育学研究科修士課程修了、同博士課程中退。米国 George Peabody 教育大学修士課程修了。
博士(教育学)。専門分野は比較教育学。
国立教育研究所研究員・同主任研究官、広島大学・大学教育研究センター助教授、同教授、名古屋大学国際開発研究科教授、広島大学教育学研究科教授を経て現職。
北京師範大学、浙江大学など中国諸大学の客員教授、日本比較教育学会会長を歴任。

インタビュアー:飯吉 透先生

京都大学理事補(教育担当)
高等教育研究開発推進センター長・教授
京都大学大学院教育学研究科教授(兼任)

動画閲覧・PDFダウンロード

PDFデータは下記よりダウンロードいただけます。

※講演日:2020年9月18日(金)

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