̶ 遠隔授業で得た知見を対面授業にどのように活かしたいとお考えでしょうか
松本:まず、前期はオンデマンド授業用に教材をたくさん作りましたので、来年はこれを反転授業を含めてかなり活用できると思っています。後期は完全対面授業となっていますが、オンデマンド授業用も並行して教材を作ろうとしています。また、通常であれば前期のコースは前期終了後にクローズするのですが、今年度は復習を希望する学生がいることを考慮して、通年開いておくことにしました。
石原:対面授業と異なり、オンライン同時双方向授業では全体の学生の様子をその場で把握することが難しかったことを踏まえ、ポイントごとに小さな問いを対面授業より頻繁に出すことで集中度を高めることが大切だということがよくわかりました。それを対面に応用していけば、効果的な授業ができるのではないかと思いました。
また、LMSを使えばアクティブラーニングに大切な予習・復習も把握できるので、うまく活用していけば効果的な授業ができると感じました。
̶ 小山高専では、そろそろ manaba を使い始められるようになるかと思いますが、前期の授業の録画など、どのように活かしていきたいとお考えですか
石原:前期の授業はほとんどの先生が録画してくれていたので、これを再編集してアーカイブとして見られるようにすることで、いい教材になるのではないかと考えています。すでに、前期授業の録画再生回数は増えていっており、学生が復習目的で見ていることがわかっていますので、きちんと整理して公開すれば学生に役立つだろうと考えており、その管理に manaba を活用できると考えています。
̶ 遠隔授業で学生の集中力や意識を高めるためにどのような工夫をされましたか
松本:同時双方向授業と違って、オンデマンド授業ではなかなか難しいと感じています。教材動画の中で、先生自身をワイプとして入れている先生方もいらっしゃいますし、動画の中に自身が出て説明している、という先生もいらっしゃり、皆さん、色々と工夫していました。
学生のほうは、通学できなくて、家で一人で過ごすという者も少なくないので、コミュニケーションという意味では無理強いをしないように配慮しました。レポートなどの締め切りも緩やかに、広い心で対応していました。
石原:リアルタイムのほうが、双方向のコミュニケーションもしやすいと思いますが、授業でやっていると、全員の顔は見えませんので、難しいところがあります。例えば授業中にチャットで学生から質問を受けたり、こちらから質問したりと、授業にライブ感を持たせるのがいいかなと思っています。
また、LMSを使えばアクティブラーニングに大切な予習・復習も把握できるので、うまく活用していけば効果的な授業ができると感じました。
授業時間との兼ね合いもあり時間が限られる中でそのようなことをするのは、かなり工夫が必要です。こういうところでLMSなどを活用できればよいかなと思っています。
̶ 前期の成績評価に関してはどのようにされましたか
松本:評価に関しては先生の裁量に任されているので、私の場合をお話すると、試験7割、レポートなどの提出物等が3割で評価しています。一応、例年と同じような試験を行いました。結果に関しては、オンデマンドでよく学んでいる学生はいい結果を出しています。一方で、中間層が減り、二極分化した感じがしています。
石原:二極化するというのは雰囲気的にわかります。中間テストに関しては、推奨週間という形で期間を設定し、実施に関しては先生方にお任せしました。その一方で、「都度評価」つまり授業ごとに小テストやレポートなど、少しずつ評価できるものを蓄積しましょうということを先生方にお願いしました。その形で何とか出来たので、少しホッとしています。
̶ 阿南高専でのLMSの運用に関してお聞かせいただけますか
松本:manabaを導入して5年半になりますが、まずmanabaを選んだ理由としてはインターフェースが簡単である点です。機能は必要なものがそろっていますので、これがいいだろうという判断です。
導入後は短期間で普及しました。2年目で先生方の半分以上、一昨年には8割ぐらいの先生が使っていました。
一部には別のLMSを使っている先生もおりますが、全学共通のLMSは manaba となっています。昨年(2019年)の4~9月と今年(2020年)の同じ時期を比べると。ログインに関しては先生方も学生も3倍になっていました。また、事務職員も学生に対する周知などで使っていました
̶ 小山高専ではこれからLMSをどのように活用しようとお考えですか
石原:復習や再履修科目など、科目をもう一度聞く必要がある場合や、再度学修したいという学生向けに使えると考えています。特に再履修などは、最初に聞いた時には理解できなかったところを何度も聞いてできるようになるわけです。現在は場合によっては先生と学生が少数や1対1で補講をするようなこともあり、こういうところでうまく使えば、学生の学びのプラスになるのではないかと考えています。
̶ 阿南高専での別システムとmanabaのすみ分けについてお聞かせください
松本: manaba はよく使っています。moodleや他のシステムとも共存していますし、教職員間ではサイボウズを使っていますが、やはり使いやすいシステムが残っていくんだろうと思います。
̶ 小山高専では既存のシステム使い分けなど、どのように意識していこうとお考えですか
石原:松本先生がおっしゃるように、使いかたがあまり難しくないというのが定着の基なのかなと。機能がたくさんあっても難しいと使う側も気が引けてしまいますのでなるべく簡単に使えるのがいいのだろうなと、ちょっと( manaba に)期待をしております。
̶ LMSの費用についてはいかがでしょうか
松本:導入当時は補助金を使うことができたので、それを使っていました。補助金終了後は受益者負担ということで、教員分は学校から、学生側には教材費として負担してもらっています。
石原:どうするかはこれから話し合う予定です。
̶ それでは参加者からの質問にお答えいただきます。遠隔授業に関して学生からの反応はいかがでしたか
石原:隔授業は初めてでしたが、学生のほうは「今時の学生」でした。あまりハードルが高くなかったようので、逆に私たちがびっくりしたぐらいです。
松本先生:今回に限らずmanabaの使用を始めた当初から、学生は説明をせずとも一気に使えるようになりました。一方、学生が使っているので、使っていない先生が、学生側から「 manaba を使わないんですか」と聞かれるようになり、先生方もハードルを乗り越えて、使っていただけるようになりました。
̶ 成績の二極化が観測されているようですが、対面授業と成績が反転する学生などはいましたか
松本:教材や演習問題に取り組んだ回数が把握できますが、やはり何度も取り組んだ学生さんは普段よりもいい点を取っています。これは印象値ではなくデータとして残されています。遠隔授業のほうが向いている学生さんはいました。
石原:松本先生がおっしゃるように、特に録画やオンデマンド授業では、何度も動画を見ようと思ったら見ることができるので、学習の定着もよいのだろうと推測されます。それが極端に出て、逆に中途半端はないのだろうなと思います。
本学でも前期の授業でデータを取ったものがあり、普通の対面式の授業と遠隔の授業で、さほど大きな差はなかったので、遠隔授業でも定着は問題ないのではないか、というのが結論でした。
̶ LMS導入のきっかけについてお聞かせください
石原:本学ではこれまで全学のLMSはなく、一部の(ITが得意な)先生が独自にLMSを使っていたという範囲でした。manabaを選定した理由は、使い勝手・使いやすさを中心にいろいろ調べていった結果、manabaが最適であるという結果にたどり着いた、ということでした。