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第5回「私の遠隔授業」オンラインセミナー 総評

2020年9月18日(金)に実施された第5回「私の遠隔授業」オンラインセミナーで京都大学の飯吉透先生にご講演いただいた内容をまとめております。

最下部に動画とPDFデータもご用意しておりますのであわせてご覧ください。

総評「世界一受けたくなる遠隔授業を目指して」

いかに学生目線で授業づくりをできるか

新型コロナウィルス感染拡大を受けて、緊急対応として行われた2020年前期の遠隔授業に関して、「私の遠隔授業」と題し、5回にわたり遠隔授業に取り組まれた先生方にお話を伺ってきました。
5人の先生方は、教える科目、学生のターゲット、そして大学も国立・私立と非常に多様ですが、いずれの先生も、あふれる情熱と優しさをもち、教育的配慮も行き届いた、先生として、人間として素晴らしい方々でした。同時に感じたのは「遠隔授業」が良いのではなく、そもそも先生方がやられる「授業」そのもののやり方が良いのだと強く感じた次第です。

その最たるものは、学生目線で親身になって授業を考えるということだと思います。ともすれば教員目線で普段と同じような内容・効果を考えればよいと考えがちですが、学生から見れば、授業は「体験」「経験」になるわけで、この体験・経験の立場から、オンラインで行う場合にはどう授業をやればいいのかということ、例えば、リアルタイムがいいのか、オンデマンドがいいのかということを考える、ということが大切だと感じました。

オンデマンドでも、リアルタイムでも工夫次第で色々できる

オンライン授業では非同期となるオンデマンド授業と同時双方向で行うリアルタイム授業がありますが、それぞれの特性を理解し、工夫することで、かなり色々なことができるということが分かったのは大きな収穫でした。 manaba にzoomやWebexといったWeb会議システムだけでなく、小ネタ的なさまざまなツールを組み合わせることで、より多様な工夫ができるということがよくわかりました。

また、学生には常々能動性や創意工夫、想像力、やり抜く力(GRIT)の大切さを説いていますが、5人の先生方はこのオンライン授業において、これらの行動を自ら実践されているということも言えると思います。
このように見てみると、5人の先生方は皆さんポストコロナを見据えたBest Mixに向けた助走を始めているどころか、全力疾走されているように感じられました。

ニューノーマルな大学教育をどう考えるか

今、大学の教育はオンライン型と対面型の間を行ったり来たりしているイメージだと思います。前期はオンライン型一辺倒でした、学生や親御さん、そして文部科学省からも対面授業の実施は求められており、後期からは対面授業も増えていく見込みです。しかし、今後の感染状況にもよりますが、対面型とオンライン型を同時に行う、ハイブリット型をやらざるを得ない状況も来るでしょう。ハイブリット型はいろいろ検討すると大変なことも多いのですが、できないわけではないので、とりあえずやってみよう、という動きもあります。この状況はある意味、オンライン型やハイブリット型に習熟していく修行のような状態ではありますが、後期が終了するころになれば、おそらくかなり先生方が慣れてできるようになるだろうと考えています。

ポストコロナのことを考えれば、この3つの型、それ以上の型もあると思いますが、これらを組み合わせて今までできなかったこともできるようになっていくのではないでしょうか。すでにやっているものはさらに充実した形、多様な形、柔軟な形でやっていくことができるでしょう。
大げさに言えば、大学を解放していく、増強していくことが可能になっていくと思います。

<飯吉先生による参加者へのアンケート>

では、ご参加いただいたみなさんにアンケートを取ってみたいと思います。

Q:対面授業と比べて、オンライン授業が良かったことは何でしょうか。

A
・これまで授業に出ることができない学生が出席できた
・質問する学生が増えた
・個々の学生とのコミュニケーションが取れた
・学生の顔が覚えられる
・オンラインでも、クオリティの点で対面に勝るとも劣らない授業ができるのだということを知ったこと
etc.

飯吉:質問する学生が増えたというのは、学生の授業に対するオーナーシップ感が増したことを表していると思います。また、対面に戻さなければという意識が働きがちですが、後期の授業において、ぜひオンラインを進化させるという気持ちで取り組んでいただきたいと思います。
このほかにもコメントをたくさんいただきました。これだけいいことがあったということは素晴らしいと思います。

Q:後期、オンライン授業/ハイブリッド授業を行うにあたり、心配なことは何でしょうか。

A
・学生のよくない意味での“慣れ”
・実験・実習系の科目をオンラインでどこまで対応できるか不安
・実習系の授業で、オンラインと対面を併用するときに、登校可能な学生と登校難の学生との間で、どうしても学びの質が異なってくるため、工夫でどれだけ対応できるか、が課題です。
・前期以上の工夫をしなくてはいけない思いがある
・グループワークがうまくできるか
・対面が基本だが、急に遠隔授業への変更が懸念されるため、両方の準備をしなければならない
・目の疲れと腱鞘炎の対策
etc.

飯吉:後期、対面が増えていくとは思いますが、全授業で見ると7割ぐらいはオンラインになるのではないかと個人的には見ています。その中でも一部の授業は対面で行うという工夫もあると思います。
また、いろいろな事情で対面に参加できない学生がいることも考えられます。また、多くの大学では、実習系、そして少人数の授業を優先して対面授業を行うとみられていますが、それができなくなった場合のバックアッププランを考えておかなければならないというのは非常に悩ましいところだと思います。前期の経験も生かして工夫して取り組んでいければと思います。

<参加者からのチャットによる質問>

・後期の授業では対面授業が始まりますが、海外からzoom参加の学生が混在するのでなかなか難しいと感じています。

飯吉:なかなか難しい課題ですね。学生が混在していると、言語の問題があります。ライブでやるとディスカッションなんかはなかなか難しいですが、オンデマンドの活用や非同期のディスカッションツールなどをうまく使って工夫すれば、言葉の障壁はある程度緩和されるのではないかと思います。手間はかかりますが、オンラインでサポートしてあげると、もしかすると対面より良い授業ができる可能性もあるかと思います。

終わりに

後期の授業も始まりつつあると思います。私の大学でも問題は山積していますが、皆さんもぜひそれぞれの持ち場で頑張っていただきたいと思います。お互い後で振り返ってみて、やり切ったよね、と言える一年にできればと思います。

講演者

飯吉 透先生
京都大学理事補(教育担当)
高等教育研究開発推進センター長・教授
京都大学大学院教育学研究科教授(兼任)

カーネギー財団知識メディア研究所 所長、東京大学大学院 情報学環 客員教授、
マサチューセッツ工科大学 教育イノベーション・テクノロジー局シニア・ストラテジスト等を歴任。共編著書に『ウェブで学ぶオープンエデュケーションと知の革命』(共著、筑摩書 房)、「Opening Up Education」(MIT出版)等。

動画閲覧・PDFダウンロード

PDFデータは下記よりダウンロードいただけます。

※講演日:2020年9月18日(水)

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