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2021年度 第3回教育の質保証・質向上オンラインセミナー

2021年10月29日(金)に実施された2021年度 第3回「教育の質保証・質向上オンラインセミナー」の内容をまとめております。

最下部に動画もご用意しておりますのであわせてご覧ください。

「認証評価の今とこれから」―「学習成果」の可視化の現状と展望―

現在、我が国の高等教育における内部質保証の中心軸として、学習成果の可視化が強く求められています。この学習成果は、コンピテンシーを基本に、学位授与方針の中に明記することとされ、そこでは、卒業時に「何ができるようになったか」という視点が重視されます。大学間交流や学位、単位の同等性を促進するという意味からも、学習成果の可視化はますます重要になってきています。

 

認証評価基準における「学習成果」可視化の位置づけ

認証評価基準は、学習成果及びその可視化について、どういう規定ぶりをしているでしょうか。3つの評価機関のうち、大学基準協会、日本高等教育評価機構は、「学位授与方針に学習成果をきちんと明示してください。それを測定・評価すべく、測定方法、測定指標を開発し、これを適切に運用してください。そしてその測定・評価もしくはアセスメントの結果を改善・改革に活用してください」という規定ぶりになっています。大学改革支援・学位授与機構もそのことを前提に、卒業時、それから卒業後の学習成果の効果・影響力を重視した基準の運用がなされていると理解できます。

特に、私が長期にわたって在籍していた大学基準協会について見ていきますと、「学習成果の明確化、学習成果の測定・評価のための評価指標や評価方法をしっかりと定め、これを適切に運用すること、結果をフィードバックすること」が、具体的に示されています。点検・評価項目についても、学習成果のアセスメントの方法や、それをどうフィードバックしているかが重要な評価項目となっています。

具体的に、大学基準協会は、そのアセスメント方法として、アセスメント・テスト、ルーブリック、学生調査、卒業生、就職先への意見聴取といった手法を例示しています。近年では、学習成果の可視化を伴うアセスメントを認証評価の重要項目と位置づけその運用を行っており、いまだそのための検討すらしていない場合は是正勧告を出す、測定方法が不適切に見える場合は、改善課題として指摘するなどの措置を講じているようです。

 

達成度評価のあり方に関わる調査

さて、大学基準協会は、学習成果の可視化についての状況をアンケート調査し、50%を超える学校から回答を得ました。学習成果をアセスメントする手法として、多くの項目を提示し、これらのうちどの程度導入しているかを問うています。

その結果を見ると、学習成果の可視化のツールとして、極めて多くの大学が、定期試験や課題の評価、レポート試験、小テストなどをイメージしているようです。そして、こうした直接的アセスメントの手法を補完するものとして、学生の意識・活動調査といった間接的アセスメント手法も活用されているようです。それに対して普及度が低いのは、サービス・ラーニング等の評価などです。

 

大学の設置形態による違いとしては、国立大学で非常に進んでいるということが明確となりました。理系、保健系は、従来からアセスメントは進んでいますので、その分野を多く包含している国立大学が先行しているといえます。フィールドワーク、臨床実習等での取り組みでも、やはり国立、公立、私立の順で普及度が高いようですし、雇用先による評価も、国立大学が他を圧倒して普及率が高いという結果となっています。

分野別に見ると、直接的手法の採用状況にさほどの違いがありませんが、能力・スキルの涵養(かんよう)度を図る「外部テスト」や実践学習については、その普及度、対応の仕方に違いが出ました。例えば資格試験の合格率や得点をアセスメントに用いる割合は、医・歯・薬といった保険系が圧倒的に高くなっています。フィールドワークや臨床実習等の取り組みについても同様です。

 

このアンケート調査では、「試験を通して学習成果を測定している」という回答が多く見られた感があります。しかしながら、そうした直接的手法と親和性が高いといわれるルーブリックの普及が低水準にあることは、果たしてそこで自覚的に直接的手法に拠った学習成果のアセスメントが行われているかどうか、やや疑問が残ります。

また、国立大学以外では雇用者調査が低調との結果が出ました。やはり大学の対社会的な人材育成機能との関係で、その在り方の再検討が必要だと考えます。

全体として国立大学において、学習成果のアセスメントの普及度が高いのは、国立大学が公財政によって運営・維持されているのも要因の一つといえるでしょう。公財政を投入する際、評価を伴う競争的な資金としてそれが交付されていることが少なくないことから、国の高等教育政策の影響を受けやすい国立大学がその営みを他に先行して行っていると見ることができるのです。中教審等の答申や、あるいは文教政策としてアセスメントを強化するという方向性が示されたら、こぞってそれを取り入れていくという流れになっている。それが数値となっても表れているといえるでしょう。

 

今後の学習成果の可視化に関する提言

(1)大学に対する提言

ところで、われわれが行った達成度評価に関わる調査結果をまとめた報告書では、今後の学習成果の可視化の在り方をどう変えていけばよいかということについて、提言を示しています。

 まず大学に対するもので見ていきますと、アセスメントの可視化を行う以上、学習成果の中身も、文言上より明確化することが必要ではないか、そして、学習成果のアセスメントの実施指針であるアセスメント・プランと呼ばれるものを、各大学においてしっかりと設定していくことが必要ではないかということです。

学習成果の達成度に資するルーブリックの制度化も大切です。また、学生の学びの改善に向けて、学習の自己観察、学習の自己省察を支援できる学習ポートフォリオの積極活用も求められます。これらのことを提言として挙げると共に、学習成果の可視化の意義を、FDを通して、学内教職員に浸透させていくことが必要だということも示しています。

加えて、そうした達成度評価は内部質保証の大きな枠組みの中でなされるわけですから、それを支える部局、例えばIR部署などが、重要な大きな役割を演じるべきであるといった提言も提示しています。

 

(2)認証評価機関に対する提言

 上記調査結果報告書は、認証評価基準に対しても、僭越ながら改善してほしい点を示しています。そこでも、学習成果の可視化というのは重要な部分をなすものです。

学習成果の周知方法でいうと、認証評価の審査過程で学位授与方針が示す学習成果も大事ですが、その授業科目の学習目標も、この学習成果と整合しているものでなければいけません。そこを認証評価機関はしっかりと見てほしい。シラバスを個別具体に検証することも必要なのではないかと考えます。

調査結果報告書は、学習成果の設定と着地点である学位授与の部分だけではなく、卒業後も、学習成果が社会で生かされるべきだということをしっかりと提示していただきたい。同じ視点から、学習プロセスにも目を向けた形のアセスメントの在り方を示していただきたいと述べています。

それから、学習成果とカリキュラム構造の連関性を追求する文章も追加してほしい。「どういう資質・能力を身につければ、次の段階としてこの科目を取ることができるか」という、学習成果を見据えてカリキュラム構造の検証をする。それを各大学に求めるような、大学基準の規定ぶりにしていただきたいと、同報告書は提言をしています。

 また、学習成果を可視化するためのツールとして、現在、認証評価に関わる大学基準協会の『手引書』では4つの実例が記載されていますが、もう少し選択肢の幅を広げてもらいたい。加えて、そうした指標・尺度を用いてどういうアセスメントを行うことになるのか、しっかりと文章で道筋を示してほしいということです。

そして、学習成果の可視化について、優れた取り組みをしているところは「グッド・プラクティス」として、大学名も付した上で、基準協会のWebページで公表していただきたい。これは、すでに実施され始めているようです。興味のある方はホームページを覗いてみていただければと思います。こうした一連の提言を含む、この達成度評価に関わる調査結果報告書は、現在、大学基準協会のホームページにアップされています。

 

「学習成果」の可視化に関する課題と展望

さて、従来より、「内部質保証」を簡略化すると図のようなPDCAサイクルで示されます。ところがよく考えるとそこに課題があるのではないかというのが、私の考えです。

1つ目は、学習成果の内容・意義の共有化が、教員と学生間でうまくなされていないのではないか。それは教員の方に偏したものとなっているのではないかということです。2つ目は、学習成果のアセスメントの中で、教員は成績評価を含む考査の実施者であって、学生は被考査者として受け身の立場にとどまっている。果たして学生の学びを高めるという考え方のもと、学生を受け身の立場で理解してよいのだろうかということです。3つ目として、「学習成果」の達成度アセスメントの結果が、教員側の教育改善の視点に偏っており、学生の学びの向上を図るという視点が欠けてはいないかということです。

欧米の学説動向等も踏まえて言えば、学位授与方針で「学習成果」が抽象的記述になっているのは仕方ないとはいえ、授業科目レベルでのコンピテンシーと態度・志向性を含む価値原理の涵養という部分については、明確に区分することが大事だと考えます。

それから、大学は高等教育機関として人材育成機能を担っていると言われている割には、雇用者ニーズが必ずしも十分に視野に入れられていません。大学卒業後に社会で活躍したい、職を得たいという学生のニーズを考えると、その学習成果を、employability(雇用価値)と結びつけながらこれを運用していくことが大事なのではないかと考えます。

それから、現状では学位プログラムや教員サイドに偏っているアセスメントの視点を、「学習者の利益」の視点にシフトすべきではないか。達成度評価に焦点化されるあまり、学位授与という着地点が過度に重視されており、そこに至る成長プロセスが、あまり考慮されていないのではないかという疑問があります。これは、学位等を表わす「高等教育資格」に関わるもので日本も締結している地域条約もそういう規定ぶりなのですが、それに引っ張られているような感じがします。学位の質を保証するためには、その着地点は大事ですが、そこに至るまでに学生がどう成長していったか、学びがどう変化していったかをアセスメントしていく、そういう視点もこれから大事になるのではないかと考えています。

ところで、アセスメントの主体は間違いなく教員ですし、私も教員がイニシアチブを取るべきだという考え方です。しかし教員主導のもとで、学生の自己アセスメントや、学生間での「同僚評価」の方向性も考えていくべきではないでしょうか。それによって、学生たちが学びに向き合うモチベーションを高めることにもなるし、自己の学びを省察することで、知識・能力だけではなく、その学問が目指すメンタルの部分に気づく契機にもなると考えます。

次に、ルーブリックについてですが、これは成績評価の客観性や公正性の観点から大事だといわれます。それはもちろんそうですが、個別の授業でパフォーマンスの判定や成績をつけるときに用いられるとすると、学習の到達目標がどれだけ達成できたかという観点から本来その判断がなされるべきです。ルーブリックの基準も、その学習達成度の段階に応じて設定されるべきだと思います。

そうなると学生は、ルーブリックを見て、「自分はこの学習成果との関係でこの達成段階にあるからBなんだ」と、わかります。「それならば、もう少し頑張らないといけない。次の科目ではその部分に留意しながら、さらなる学習成果の高みに向けて頑張ろう」ということで、学習成果の達成に向けて、意欲を高めることにもつながります。ルーブリックの策定は教員の専権事項であることを認めつつも、教員と学生がルーブリックを共有し、場合によっては、ルーブリックの策定過程に学生の意見を反映させることも必要になる時が来るのではないかと思っています。

アセスメントのフィードバックの観点から言うと、教員は教育の改善・改革につなげていく、学生自身も、ルーブリックをもとに自己評価をする、それによって学びのモチベーションを高め、自分がどの程度の達成度にあるかが理解できます。

学習成果のアセスメントにおける外部質保証の関与ということについて見ると、今後は、「学習成果」と学位授与の整合性が、基準適用の最低基準として扱われることになるでしょう。一方で、学習プロセスの中で、学生の成長の度合いをどう具体的に促進させていくかをしっかりと見るようなアセスメントにしていくことが大切です。将来的には、学生の視点に立ったアセスメントの要請を、外部質保証機関が求めていく可能性もあるでしょう。

さて現在、学習ポートフォリオは海外で非常に重視されており、アメリカの大学では50%以上がプロジェクト型授業を中心に、何らかの学習ポートフォリオを採用していると言われています。これは、私たちが考えている学習ポートフォリオよりも一歩進んでいるものです。まず学習成果の到達目標を教員と学生が共有し、最終判定までに教員が中間評価を行います。それから最終レポートの前にも両者協働で評価をし合う中で、その期間、学生は学習ポートフォリオを用いて自己アセスメントをすることになります。そのプロセスは、教員と学生が一丸となって共用するし、ルーブリックも協働で活用し、フィードバックの機会も共有し合います。さらには、そこで学生が学習ポートフォリオを通して自己省察をする中で、倫理観などの志向性の涵養の度合いが深まることが期待されています。

 

「学習成果」の可視化の発展方向とその意義

いま、中教審答申において大学教育の質的転換が求められています。何を教えるかではなく、何ができるようになるかという考え方への転換です。これにより、内部質保証の充実や、アクティブラーニングを通して考える力を養うなど、さまざまな改革が行われています。しかし、学びの主体は学習者です。教え方の改善にとどまらず、学生の成長のプロセスをアセスメントする試みを、内部質保証、また認証評価の局面でも、しっかりと行っていくことが大事なのではないでしょうか。その中で、ルーブリックの効果的な活用、そして自己アセスメント力や自己省察力を高める学習ポートフォリオの積極活用というのも、強く求められるのではないかと考えます。

 

飯吉先生インタビュー・質疑応答

飯吉:大学業界では、シラバスや評価の仕組みを作って、形を整えるところから入っていくのですが、「仕組みができたから、これで保証される」と、安住してしまっているような気がします。早田先生は、「生涯にわたって『学び』と向き合う姿勢が大切で、これに向かって動いていかなくてはいけない。卒業に必要な単位を取って、卒論が書ければそれでいいのか。まさにプロセスの方をしっかり見ていくことが大事だ」というお話をされています。教職員も学生も、そういうプロセスに参加することが大事といわれていました。

では、大学はどこから手をつけていけばいいのでしょう。例えば専門家教育的なものがなかなか手近にないような大学の場合、支援する人や、包括していく役割の人をどう育てていけばよいのか、お聞かせいただけますでしょうか。

早田:私も実際に授業を持っていて、思うことがたくさんあります。認証評価との関係で申しますと、2017年のアジア・太平洋地域規約によって、「学位授与方針に示された学習成果を、しっかりと卒業時の学位に反映させてください。それによって学位の質と同等性が対外的にも保証されます。そのためにもしっかりとアセスメントしてください」ということになっています。

 そこで、いま各大学が困っているのは、学位を授与する根拠となったアセスメントの証拠を提示するというところです。そこはやはり、認証評価機関と関係する大学とが対話を重ねながら、あるべき立証、挙証の姿を提示していくことが必要だと思います。認証評価機関のアシスタント能力、調査研究能力を高めていくことが大事だろうと思っています。

大学の場合、学習成果を高めていくために卒業生に付加価値をつけていくことが基本ですが、実は1年次が一番大事です。1年次につまずいてしまうと、2年次以降ガタガタになります。私も、教職課程を履修するにふさわしいかどうか、学習記録も見ながら判断していくのですが、1年次に行き詰まっている学生が結構多いのです。行き詰まったら、その都度、先生や教務担当スタッフに相談すればよいのですが、どうやら試験間近にそうした悩みの相談に来るので、結局手遅れになってしまう。彼らが学習をうまくできているかどうか把握する仕組みを学内できちんと作ること、1年次にそれを効果的に稼働することが大事です。

それから、カリキュラムにおける履修科目の順次性が担保されていることも大切です。それがないと、必要な知識、理解、スキルが修得できずに、2年次に混乱してしまうからです。カリキュラム構造を、学習成果との関係で見直していくことも大事だと思います。

学生は、「学習成果」との関係ではなく、「試験に受かって単位さえもらえれば学位授与資格が与えられる」という意識があります。そこに風穴をあけるには、学習ポートフォリオのような仕組みを、少しずつでも導入していくべきだと思います。教職課程では、学習ポートフォリオを用いることが法令で定められています。教職課程以外でも、そういうものを効果的に運用するところから始めていけば、少なくとも第一歩はクリアできるのではないでしょうか。身の回りにある課題というのは、実は学習成果の問題やアセスメントの問題に多く関わっています。それを互いに理解し共有合っていくことが大事だという気がします。

 

飯吉:今大学に降りかかっている課題は、大学を出て何ができるようになるかというところです。本当は社会に出たところが出口で、そこでの評価をすべきですが、非常にやりにくい。プロフェッショナル育成ではなくて、ジェネラリスト育成が必要だともいわれます。そのあたりをどう結びつけるのがよいとお考えでしょうか。

早田:プロフェッショナルな人材を育成するということであれば、それは学士課程レベルにおいても、カリキュラムを見直す過程にプロフェッショナルの代表の人を加えることもあるでしょう。分野によっては、プロフェッショナルな現場の人の意見を卒業判定の参考にすることも、今後の可能性としてあり得ると思っています。

すでに、雇用の現場から大学に対して、「こういう知識・能力を持った人を育成してください。そうでないと、私たちは採用を躊躇します」という分野があります。それが、実は教職課程です。教育公務員特例法によって、教員の任命権者が教員育成指標というコンピテンシーモデルを作っていて、採用するにあたっては、この指標を満たした学生を優先して採用することになっています。教育委員会が中心に、その都道府県に多くの教員を輩出させている大学の代表者を入れて育成指標を作り、教員の募集をしている。おそらく教員採用試験の二次試験で活用されるのだと思います。

ジェネラルな部分について言えば、アメリカの場合は、「バリュー(VALUE)」という標準テストがありますし、ヨーロッパでは「チューニング」というものがあるようです。日本の場合は、あまり普及していませんが、日本学術会議の参照基準が分野別にあります。専門と教養教育・共通教育の連関性の観点から、知識・能力・スキルの涵養の方向性も示されています。その気になれば、大学はそういうものも活用できるのではないかと考えています。

 

飯吉:ルーブリックもそうですが、なぜ普及しないのかというと、歯ごたえがありすぎてハードルが高いということがあります。そこをどうやって下げていくかというのが課題になっています。

一つは、こういった学習成果の可視化を行う中で、現場の人材が不足していることが挙げられます。各大学として、あるいは国として、そのような人材を育てていくプログラムはできないものでしょうか。その点について何かご示唆いただければと思います。

早田:私も高等教育論や大学評価論をやっていますが、そういう学問的な知見を現場に即効的に活用するというのはなかなか難しい。もしかすると、それは自分の研究者としての能力を高めるための研究であって、それを現場で生かすというところが2番手に来ているのかもしれません。

やはり現場において、自分の持ち味や大学の足りないところを知っているのは、その大学の教職員です。いま何が問題なのか、それをどううまく改善して、自らの特徴・持ち味にしていくべきかについては、意欲のある現場の教職員の人たちの知見を活用していくことが大事なのではないかと思います。一にも二にも、現場の教職員です。

 

飯吉:学生の成長や変化をアセスメントの対象にするというのは大事だと思いますが、具体的にはどのような手法がよいのでしょうか。

早田:学生を成長させる即効性があるのは、やはりフィールドワークです。劇的に変わります。

飯吉:サービス・ラーニングやプロジェクトベースなどを、フィールドでやることですよね。

早田:学生さんたちが単位を取るということではなく、誰かの役に立った、これだけのことをやったと誇りを感じられる機会が増すことは、社会に出て成功することに繋がるのではないかと思います。

 

飯吉:雇用者ニーズについても質問が来ています。企業の期待に応えられるようにしたいが、大学を企業の予備校にはしたくない。そのあたりのバランスをどのように見ておられますか。

早田:実は私も、大学教育を雇用者ニーズにおもねるべきだとは考えていません。しかし「社会に出て働くために大学で付加価値をつけたい」と考えている学生は多いのです。学びに対するオーナーシップは学生が持っているので、そうしたことにもきちんと配慮していくべきだという考えです。

社会に出て仕事に就くというだけではない、「市民」としてきちんと生きていくことも大切なことです。民主制の価値を尊ぶとか、生涯にわたって学習をするとか、そういったことです。社会を支えて生きていくために必要な資質・能力を高め、社会に出てどんな状況の中でも挫折しない力を身につけるという意味で、私は“employability”という価値概念を理解しているつもりです。

 

飯吉:最後は、教職員で取り組む人材をどう増やしていくかというご質問です。できるだけ専門家を育成しないといけないとは思いますが、みんなを巻き込んでいく仕組みや文化的な部分も大事だということですね。

早田:公教育政策の動向を理解し、そしてそれらへの知識・スキルが豊富な人が大学教育の現場に行って、「さあ、みんなで一緒に改革をしましょう」と言っても、そこにいる先生との壁を取り払うのは難しいことです。やはり内発的な力がなければ、改革はできません。外部の手を借りるのは最小限にしながら、内部で理解を示している人を育成し、その改革のリーダーになってもらうのが一番よい気がします。

飯吉:やはり早田先生は愛が感じられます。人を育てるというところに対して何ができるか、この質疑応答でも、意を強めて励ましていただきました。ありがとうございます。

 

講演者

早田 幸政先生

中央大学
 理工学部教授
 教育力研究開発機構専任研究員

1953年 生まれ
1977年 中央大学法学部法律学科卒業
1980年 中央大学大学院法学研究科博士(前期)課程修了
    大学基準協会大学評価・研究部部長、金沢大学大学教育開発・
    支援センター教授、大阪大学大学教育実践センター及び
     同大学評価・情報分析室教授を経て、
現 在 中央大学理工学部教授、日本比較法研究所所員、
     大学基準協会・大学評価研究所一般研究員
近 著 『教職課程教育の質保証への提言』(編著)ミネルヴァ書房、2020年
     『[新訂版]体系道徳教育の理論と指導法』(編著)エイデル研究所、2019年
     『内部質保証システムと認証評価の新段階』(編著)エイデル研究所、2017年


インタビュアー

飯吉 透 先生
 京都大学
 高等教育研究開発推進センター長・教授
 兼任:大学院教育学研究科教授(高等教育開発論講座)
 中央教育審議会大学分科会質保証システム部会 臨時委員

 カーネギー財団知識メディア研究所 所長、東京大学大学院 情報学環 客員教授、 マサチューセッツ工科大学 教育イノベーション・テクノロジー局シニア・ストラテジスト等を

 歴任。共編著書に『ウェブで学ぶオープンエデュケーションと知の革命』(共著、筑摩書 房)、「Opening Up Education」(MIT出版)等。

 

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※講演日:2021年10月29日(金)

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