コロナ禍で初めて使った manaba
私は筑波大学で教育学を教えています。キャリア形成支援や、キャリア教育が専門です。しかし、教育分野ではありますが、オンライン授業や、遠隔授業に関しては全くの初心者です。前期(春学期)はすべてオンラインで授業を行うことになったのですが、今回、初めてmanaba を使った授業を、おろおろしながらやってきた、というのが実のところです。
筑波大学 様
筑波大学
藤田 晃之先生
2020年8月7日(金)に実施した第2回「私の遠隔授業」オンラインセミナーにおいて、遠隔授業の方法についてお話いただきました。
後半には京都大学の飯吉透先生によるインタビューも実施しております。
最下部に動画とPDFデータのダウンロードリンクもございますので
あわせてご覧ください。
私は筑波大学で教育学を教えています。キャリア形成支援や、キャリア教育が専門です。しかし、教育分野ではありますが、オンライン授業や、遠隔授業に関しては全くの初心者です。前期(春学期)はすべてオンラインで授業を行うことになったのですが、今回、初めてmanaba を使った授業を、おろおろしながらやってきた、というのが実のところです。
この前期、私は主に二つの授業を manaba を活用して行いました。
一つは3年次を対象とした教職課程科目で、履修生が219名いる大教室型の授業です。個々のやり取りが難しいこともあり、この授業はオンデマンドの動画配信方式で授業を行いました。
もう一つは一般の学類(学部)の講義で、履修生は39名です。こちらはZoomを使って、学生の顔を見ながらやり取りするリアルタイム形式の授業でした。
大教室の授業では、私も学生も初めての状況でしたし、動画配信システムが一時期不調な時期もあり、告知をすることがたくさんありました。
この状況で役立ったのが manaba でした。コースニュースで告知をすれば、学生に個別にメールで通知が行きますし、学内の掲示板などともリンクしているので、manaba のページと通知メール、そして学内掲示板と三重で告知され、学生が「知りませんでした」とエクスキューズを言えない環境になっているというのは、私にとって心強いことでした。
また、オンデマンド方式だと、学生はどうしても「いつ見てもいいじゃないか」という意識になりがちで、レポートの締め切り直前に数分だけ見ただけ、という学生もいます。
ところが、閲覧記録がエビデンスとして残されているので、数分しか見ていないような学生もすぐに把握できます。そういう学生には、個別にメールを送ると、学生から「申し訳ありません」というメールがすぐ返ってきて、その後、学生も時間を取って見るようになったので、メールによる注意喚起の効果はあったのだな、と実感しています。
また、学習意欲の高い学生のフォローにも manaba は力を発揮しています。授業では毎回必ずリアクションペーパーを提出させています。
このリアクションペーパーは1問目はいわゆる授業に関する内容で、2問目に授業の関する疑問や質問を任意で書けるようにしています。すると、毎回20~50名ぐらいの学生が2問目に記入して質問してくるので、毎回の授業後、3~4日以内に manaba 上に作った「Q&Aコーナー」に質問に答えていくということをしていきました。
1割の学生は毎回見ていて、何割かの学生は数回に1回は見てくれています。学生意欲が高い学生に対してはフォローができることは良いことだと思いました。
学生からはいろいろな質問が飛んでくるので、それを分類して、まとめて答えを書き、エビデンスを添えるという作業でしたのでとても大変でしたが、学生に対して存在承認ができたのではないかなと思っています。
リアルタイム授業ではクリッカーの respon (※)が威力を発揮しました。
出席確認ではひと工夫して、アイスブレイクを兼ねた雑談ネタになる質問を毎回入れました。例えば「最近暑くなってきましたが、あなたは」という質問を準備しておいて、出席確認代わりに「暑がり」「寒がり」「どちらも」「どちらでもない」から選んで回答をさせるのですが、1分ほどでどんどんグラフが変化していくので、私も、学生も楽しんでみています。
ちょっとした授業の入口がつくれるかなと感じています。この質問はTAの院生に用意をお願いしていたので、毎回どんな質問になっているのか私も楽しみでした。
当初は出席確認だけに使っていた respon ですが、授業の中でも、理解度の確認や、学生がどう考えているのかの分布を知ることができるようになりました。
双方向性という意味ではとても使い勝手も良く、学生の参画意識も高めることができたと思っています。
※「respon」は、(株)レスポン が開発・提供しているサービスです
特に大教室だとそうですが、提示する資料が見えない、ということがなくなったのは大きなメリットでしょう。また、リアクションペーパーを読んでいると、何度も資料を確認して書いていると感じる学生もいて、オンデマンドならではの効果と言えると思います。また、通常ですと大体1割の学生、つまり20名ぐらいがドロップアウトしてしまいますが、今回は10名程度と半分ぐらいになったのも効果と言えるでしょう。
飯吉:「学修の基礎Ⅰ」のグループワークでは、学生同士が慣れるまでにどれぐらいかかりましたか。また、慣れを促進するための工夫はされましたか。
藤田:これはオンライン授業だからだったかわかりませんが、対面ではほとんどなかった質問メールが、ぱらぱらと来るようになりました。今までなら教室や休み時間に直接質問にきて、教員にメールを送ってはいけないという意識があったのかもしれませんが、メールが来るようになって、とてもやりやすくなりました。
飯吉:オンラインで物理的な距離は遠ざかったのに、精神的距離はすごく近くなったということはとても興味深いことですね。
ところで藤田先生は、リアクションペーパーや閲覧ログなどをつぶさに見られていて、個別対応や双方向性をしっかりやられていらっしゃいますね。こういうことは普段からされていたのでしょうか。
藤田:200名の教職課程科目は年に何回か持つのですが、その場では出席を取り切れないので、出席カードというのを必ず授業後に書かせています。今まではTAの学生が出席の記録を取ったものを全部読み、翌週の授業で代表的なものを10枚ぐらい選んで、言葉で返していましたが、オンデマンドではそれができないので、Q&Aシリーズを作ったんです。
手間はかかりますが、後半になればなるほどいい質問になってくるので、学生の学びが深まっているなと感じます。
飯吉::後期はオンラインと対面のハイブリッド授業、そしていつかは通常の対面授業に戻る日も来るかと思いますが 、今回の経験から、対面授業でもこれは続けていきたいということはありますか。
藤田:一つは respon の活用ですね。学生のほとんどがスマホや携帯を持っていますから、授業でも活用していきたいと思います。
もう一つ、これまでレポートはすべて紙媒体で提出させていましたが、今後はすべて manaba を使おうと思います。見るのがすごく楽ですし、剽窃チェックもしやすいですね。実は私、食わず嫌いで manaba を全く使っていなかったのですが、今回初めて使って、ちゃんと使えば使えるんだなと感じました(笑)。
藤田 晃之先生
筑波大学 人間系(教育学域)教授
1993年3月 筑波大学大学院博士課程教育学研究科単位取得退学。
1995年1月 博士(教育学)。中央学院大学・筑波大学講師、デンマーク教育大学院
(現:オーフス大学大学院教育学研究科)客員研究員等を経て2004年4月に筑波大学助教授、その後准教授となる。2008年4月より文部科学省生徒指導調査官として小中学生からのキャリア教育の施策推進とキャリア教育に関する調査・研究に携わる。2013年より現職。
インタビュアー:飯吉 透先生
京都大学理事補(教育担当)
高等教育研究開発推進センター長・教授
京都大学大学院教育学研究科教授(兼任)
PDFデータは下記よりダウンロードいただけます。
※講演日:2020年8月7日(金)