東洋大学では、manaba はToyoNet-ACE(以下 manaba )の愛称で親しまれています。
活用方法や manaba を使ってみて感じることについて、高橋豊美先生にインタビューをさせていただきました。
東洋大学 様
インタビュー: 高橋豊美先生
学生が自ら主体的に学び、学修習慣を身につける仕組みづくり
Q.いつ頃から manaba を利用されていましたか?
東洋大学への着任当初(2012年)から利用していました。前の大学にいるときも同じようなシステムを利用していました。
Q. manaba と以前利用されていたシステムとの違いはどのようなところですか?
学生の情報がきちんと紐づいているので小テスト等を成績評価に利用できます。
授業中の発言や質問等と違って、課題の提出等が目に見えるかたちで蓄積されていくため、成績評価の対象となる学修の取り組みや成果を学生自身も確認できるところがいいですね。
あとは、東洋大学の情報システム課、朝日ネットのサポート体制がいいので利用しやすいです。
Q.近年は学修時間を確保するというところが重視されていますが、先生は manaba をどのように活用されていますか?
学修の実質化
学修時間は、どれくらい学修したかということをきちんと測るための基本的な指標のひとつと捉えられています。
日本の学生が外国の学生に比べて学修時間が少ない状況を改善して、いかに実質的な学修が行われるようにしていくかということは、
教育の質を保証するうえで大きなテーマとなっています。
では、どうやって時間を確保するか。
その根本にある問題は、学生に学修習慣が身についていないということだと考えます。
大学で授業を受ける時間を5時間から8時間にすればいいということではありません。
学修が習慣づくことによって、学生が主体的に勉強をするようになり、その結果として学修時間が確保されるということが理想的です。
manaba の活用
そこで注目したのは manaba の[小テスト]です。
使い方としては、[小テスト]に公開日時や合格条件を設定し、段階的な学修が定期的に行われるようにします。
[ドリル]機能でボキャブラリー等の基本的な知識を身につけ、合格したあとに[自動採点小テスト]機能で問題に取り組み、定着を図ります。
予習も復習も、週1回の授業前後の3日までしかアクセスができないようにしており、そのサイクルを繰り返すことにより学修習慣を身に着けていきます。
学修習慣が身につくことによる効果
このような取り組みを行っていくと、授業最後のアンケートで、年に何人かは学修習慣が身につきましたという回答をする学生もでてきます。
そのような計画的学修が自分でできるようになれば、例えば就職活動で必ず聞かれる「学生時代にやり遂げたことは何ですか?」という質問に対して、
「自己管理ができる」ということを語ることもできます。
会社に入ってきた子が自分でいろんなことを考えて、自律的に動いてくれるというのが会社にとってありがたいことだと思います。
自ら主体的に学修をすすめていくことができるということは、就職活動やその先の人生においても重要になるコンピテンシーのひとつであると思いますが、
ほとんどの学生ができていないようなことです。
「他の学生が5時間勉強しているところを10時間勉強すれば、他の学生の一歩前を進めるようになると考えてみるのはどうか」ということを学生に伝え、
動機付けをしながら仕組みづくりを行っています。
主体的に自分で勉強するようになり、それが結果として時間に現れる。
このような仕掛けをつくるのに適しているのが manaba だと思います。
manaba を用いたデータ分析等は行っていますか?
1~2年生の習熟度別になっているクラスを受け持っているため、200~300人のかなりのデータが集まってきます。
予習の段階で小テストの解答結果をダウンロードして正答率や誤答率を分析することにより、学生が間違えるポイントが見えてくるので
より効率的に指導をすることができます。
また、respon を利用して、問題を出題しています。
グラフを出して、解答結果を視覚的に見せることにより、学生は自分の弱点や、全体の学生の傾向を把握することができます。
従来であれば解説の内容等を教員が経験と直感で決めていましたが、学生ができないところについて、授業内でポイントを押さえて
解説するようなことも可能になってきます。
データをもとに的確な指導ができるというのが、このようなシステムを利用する最大のメリットです。
Q.学生の学修習慣と、能力の高さに相関はあると思いますか?
まだはっきりと相関は見えてきていません。しかし、入学当初は特にできるという印象はありませんでしたが、
時間をかけて学修に取り組み、TOEIC900点、スピーチコンテストで全国5位という結果を出した学生もいました。
学修を習慣づけるのに大切なのは、もともとの能力ではなく、能力に応じて取り組めるようにすることだと思います。
そのための工夫のひとつとして、普通、少し遅い、すごく遅いという3つの英語の音声を用意して、学生が選んで練習できるようにしています。
これから更にコンテンツを充実させていきたいです。
Q.これからの manaba に期待していることがあればお願いします。
時間も場所も選ばずに学修ができるということは良いと思いますが、これからはその学修がどれだけ実質を伴うものになっているか
というところが大事だと思います。
部分的にでも対面授業に代えて学位を与えるために利用するためには、manaba のようなオンライン教育はまだまだ発展途上であると考えています。
manabaの機能がますます充実して、世界で皆が真似したくなるようなシステムになることを期待しています。
※インタビュー日:2018年12月28日(金)